「有給、結局1日も使わせてもらえなかったんですよ…」
うちの会社に中途で入ってきた新人が、入社初日にそう話してくれました。
前の会社には2か月前に退職を伝えていて、辞めること自体は認められていた。それなのに最後の2か月は「どうせ辞めるんだから」と仕事を詰め込まれ、有給は「人手不足」の一言で流されたそうです。
この人は何も悪いことをしていません。むしろ引継ぎをきちんとしたいからと、自分から入社日を2か月後にしてほしいと言ってきたくらいです。それでも、有給は1日も使えないまま消えました。
あなたも今、こんな状態ではないでしょうか?
- 有給が40日近く残っていて、全部使ってから辞めたい
- でも「40日も休むなんて」と言われそうで、いつ言うべきか迷っている
- すでに「引継ぎが終わるまでダメ」「うちは買い取りもしない」と断られた
先に結論を書くと、退職前の有給消化を会社が拒否することは、原則としてできません。
ただ「法律上は使える」と「実際に使い切れる」のあいだには差があって、その差を埋めるのは、いつ・どうやって申請するかという段取りです。
私は20代から今まで29社を転々としましたが、そのほとんどは試用期間中に辞めているので、有給が付く前に会社を去っていました。40日も抱えて辞めたことは一度もありません。
そのかわり今は人を採る側にいて、「前の会社の有給消化が終わるまで入社を待つ」立場に座っています。
この記事では、有給40日を使い切って辞めるための段取り、拒否されたときの対処法、そして転職先があなたの入社日をどう見ているかまで、辞める側と待つ側の両方からまとめました。

辞める側と転職先の会社(待つ側)、両方の目線で書いていきます。
退職時の有給消化40日はできる?残日数と付与日数の確認方法

まずは、なぜ「最大40日」なのかという仕組みから押さえます。
あわせて、自分の有給が本当に40日残っているのかも確かめてください。
有給休暇が40日になるのは勤続6年半以上で前年分を繰り越した人
有給休暇(年次有給休暇)は、入社から6か月たち、その間の出勤率が8割以上あれば付与されます(労働基準法39条)。付与日数は勤続年数に応じて増えていきます。
| 勤続年数 | 付与日数 |
|---|---|
| 6か月 | 10日 |
| 1年6か月 | 11日 |
| 2年6か月 | 12日 |
| 3年6か月 | 14日 |
| 4年6か月 | 16日 |
| 5年6か月 | 18日 |
| 6年6か月以上 | 20日 |
有給は付与された日から2年で時効になって消えます。
つまり手元にあるのは「今年もらった分」と「去年もらって使わなかった分」の2年分だけ。年20日×2年=40日が、法律どおりに付与されている会社での上限になります。
会社が独自に法定より多く付与している場合は、40日を超えることもあります。
年5日の取得義務化で、退職時は35日前後になることも
2019年4月から、年10日以上の有給が付与される人には、会社が年5日を確実に取らせる義務ができました。
会社がこれを守っていれば、付与された直後に40日あっても、その後1年のうちに最低5日は減ります。退職のタイミングによっては、手元の残りは35日前後になっているはずです。
逆に言うと、付与日から何か月もたっているのに40日まるまる残っているなら、会社が年5日の取得義務を守れていない可能性があります。こちらは違反すると1人につき30万円以下の罰金です。

私の有給の残日数は、どこを見れば分かるの?
多くの会社は給与明細に有給の残日数が載っています。載っていなければ、人事や総務に「残日数と、それぞれの付与日」を聞いてください。
付与日まで聞いておくと、次の付与日をまたいで退職日を設定できるかも見えてきます。
退職日を過ぎた有給休暇は1日残らず消滅する
有給は、会社との雇用関係が続いている間だけ使える権利です。
退職日を迎えた時点で残っている分は、時効を待たずに消滅します。あとから「使えなかった分を払ってくれ」と請求することはできず、会社に買い取る義務もありません。
使いたい日は、退職日より前にすべて日付を決めて申請しておく。
これが40日を守るための大前提です。
有給が足りず、休みを欠勤で埋めることになりそうな人へ有給使い切った欠勤でクビになる?29社辞めた採用担当が退職トラブル回避法を解説】
では、会社が「40日も休まれたら困る」と言ってきたらどうなるのか?
次は、よく出る断り文句ごとに見ていきます。
退職時の有給消化は拒否できない|会社の断り文句と時季変更権

有給を使わせたくない会社が持ち出す理由は、だいたい決まっています。
代表的な断り文句を1つずつ取り上げて、法律上通るのかを確認していきます。
「人手不足だから無理」は有給消化を拒否する理由にならない
退職前の有給消化で、いちばん多い断り文句がこれです。
ただ、人が足りないのは会社の人員計画の問題で、あなたが有給をあきらめる理由にはなりません。
会社に認められているのは、有給の日を「別の日にずらしてもらう」ことだけで、有給そのものを取り上げる権利はありません。
しかも慢性的な人手不足は、日をずらす理由としても認められにくいとされています。「どうせ辞めるんだから」に至っては、理由ですらありません。
人手不足を口実にしながら、人を増やそうとしない会社もあります。そういう会社の見分け方は人手不足なのに雇わない会社は危険!20代が見極めるべき5つの警告サインと対処法】にまとめました。
「引き継ぎが終わるまでダメ」も有給取得の条件にはできない
会社が引き継ぎをお願いするのは自然なことです。
ただ、有給は「引き継ぎが終わったら使っていい」という条件付きの権利ではありません。引き継ぎを理由に有給そのものを認めない、というのは筋が通りません。
とはいえ、引き継ぎを放り出して有給に入れば、揉める原因になるのも事実です。
いちばん早いのは、引き継ぎを最終出社日までに終わらせる計画を、自分から先に出してしまうこと。
相手が「引き継ぎが」と言う前に、その答えを渡しておけば話はそこで止まります。
退職前は「繁忙期だから別の日に」の時季変更権も使えない
先ほどの「別の日にずらしてもらう」権利は、時季変更権と呼ばれます。有給の申請日が事業の運営を妨げる場合に、会社が使えるものです。
ただしこれは、ずらす先の日があってこその話。退職日が決まっている人には、退職日より後にずらせる日がありません。
退職前の有給消化に対しては、時季変更権は事実上使えないとされています。
有給消化の拒否は労働基準法違反。罰則もある
正当な理由なく有給を取らせないのは労働基準法39条違反で、罰則は6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です(2025年6月から「懲役」は「拘禁刑」に変わりました)

違法なのに、なんで平気で断ってくるんですか?
罰則はあっても、労働基準監督署が動くのは相談が来てからです。言われた側が黙って辞めていけば、会社にとっては「断ったほうが得」という計算が成り立ってしまう。
断ってくる会社は、あなたが黙って辞めていく前提で話しています。その前提を崩すのが、次の章以降でやることです。
ここまでは法律の話でした。次は、法律を知っていても有給を守れなかった人の話をします。
有給消化を拒否された人の実例|早く伝えても安心できない理由

冒頭の「有給を1日も使わせてもらえなかった」人の話を、もう少し詳しく見ていきます。
「退職を早めに伝えれば大丈夫」と思っている人ほど、読んでおいてほしい話です。
引き継ぎのために2か月前に退職を伝えた人が、有給を1日も使えなかった
その人は、うちの内定が出たあと、引き継ぎをきちんと済ませたいので入社は2か月後にしてほしいと、自分から言ってきました。そして前の会社にも、すぐに退職を申し出ています。退職日の2か月前です。
退職そのものは認められました。問題はそのあとです。
後任が見つからないことを理由に、残りの2か月は「どうせ辞めるんだから」と激務を当てられ、有給は「人手不足だから」と消化させてもらえないまま最終日を迎えた。入社初日に、本人から聞いた話です。
私は、この人を責任感のある人だと感じました。だからこそ、その責任感の分だけ損をさせられた形になったのが、聞いていて悔しかった。
危なかったのは「伝えるのが早すぎた」ことではない
誤解してほしくないのは、早めに伝えたこと自体は間違っていないという点です。
危なかったのは、申し出てから退職日までの期間が長いほど、会社が押し返してくる時間も長くなるということ。2か月あれば、後任探しが進まない焦りも、「辞める人に何を遠慮するのか」という空気も、職場の中でじわじわ育っていきます。
このケースで足りなかったのは、退職を申し出るのと同時に「有給をいつからいつまで使うか」を決めて出しておくことでした。有給の話をあとから切り出すと、「今さら」「この忙しいのに」と言われる隙ができます。
退職の申し出と有給の日程は、同じ日にセットで出す。これだけで、押し返される余地はかなり減ります。

善意で長く取った期間が、いちばん削られやすいんです。
それでも押し返されたときに何をすればいいか。軽い順に4つの段階で見ていきます。
退職時の有給消化を拒否された時の対処法|4つの段階

拒否されたからといって、いきなり弁護士に頼む必要はありません。基本は軽い順に進めます。
ただ、退職日まで2週間を切っているような場合は、途中を飛ばして最後の段階から動いたほうが間に合います。
1. 有給休暇の申請をメールか書面で出し、証拠を残す
口頭で「有給を使いたいんですが」と相談するのではなく、メールや会社の申請書で日付を指定して出します。有給は会社に許可をもらうものではなく、働く側が時季を指定することで成立するものです。
文面はこれくらいで十分です。
「退職日の◯月◯日に先立ち、◯月◯日から◯月◯日まで、年次有給休暇を取得します。引き継ぎは◯月◯日の最終出社日までに完了させます。」
理由を書く必要はありません。申請した日付が残っていれば、あとで「聞いていない」とは言わせません。
2. 上司が認めないなら、人事部・総務に同じ申請を出す
直属の上司が「人手不足だから」と止めているだけで、会社としては認めるつもりがある、ということもあります。上司のところで止まったら、同じ申請メールを人事部や総務にも送ってください。
ただ中小企業だと、人事も総務も社長が兼ねていて、上に持っていく先がないこともあります。その場合は、次の段階に進んでください。
3. 労働基準監督署(総合労働相談コーナー)に相談する
それでも認められなければ、労働基準監督署や、各都道府県の労働局に設けられている総合労働相談コーナーに相談できます。相談は無料です。
持っていくものは、有給を申請したメールや申請書の控え、就業規則、有給の残日数が分かる給与明細。これがそろっていると話が早く進みます。
ただし労基署は、会社に指導はできても、あなたの代わりに会社と交渉してくれるわけではありません。
退職日が迫っていると、指導が入る前に最終日が来てしまうこともあります。
4. 弁護士の退職代行に有給消化の交渉を任せる
時間がない、会社と話すこと自体がもうしんどい。そういうときは、弁護士に交渉を任せる方法があります。
ここで知っておいてほしいのが、一般企業が運営している民間の退職代行は、有給の交渉ができないということ。できるのは「辞めます」と伝えるところまでで、会社と条件をやり取りするのは弁護士法に触れるためです。
有給消化の交渉まで任せたいなら、弁護士か労働組合が運営しているところを選んでください。弁護士なら、未払いの残業代があればそれもまとめて相談できます。
弁護士法人ガイアがどんな事務所で、料金がいくらかかるのかは【内部リンク:弁護士法人ガイアの退職代行 評判と料金|29社辞めた男が検証】で確かめられます。
\40日分の給料、黙って手放すには大きすぎる/
相談は無料。頼むかどうかは、話を聞いてから決めれば大丈夫です。
「退職代行なんて使ったら、周りに何を言われるか」と引っかかる人もいると思います。その声の正体は退職代行は頭おかしい?クズ・非常識と言う側の本音と現実に書きました。
ここからは、そもそも揉めないための段取りです。
40日を使い切るには、退職日から逆算するのがいちばん確実です。
有給40日を消化する退職スケジュール|退職はいつ言う?

40日は、思っているより長い期間です。カレンダーを1枚めくるくらいの感覚でいると、日数が足りなくなります。
40日の有給消化は、カレンダーで約2か月
有給は、もともと出勤日だった日に使うものです。土日や祝日など、もともと休みの公休日には使えません。週5日勤務なら40日は約8週間分の出勤日で、祝日も挟むとカレンダーの上では2か月前後になります。
たとえば3月31日を退職日にするなら、最終出社日は1月の末ごろ。そこから逆算して、引き継ぎの期間を決めていきます。
有給消化は「最終出社日のあと」にまとめるのが基本
退職時の有給消化には、大きく2つのパターンがあります。
| パターン | どう消化する? | 特徴 |
|---|---|---|
| 🟢 退職前にまとめて消化 | 最終出社日までに引き継ぎを終わらせ、その後の有給をまとめて消化する | 引き継ぎと有給消化を分けやすく、会社との調整もしやすい |
| 🟡 引き継ぎ期間に混ぜて消化 | 引き継ぎ期間の途中に有給を入れながら、最後の出社日まで働く | 有給を分散して使える。引き継ぎとの兼ね合いで調整が必要 |
どちらの方法でも、退職日までに残っている有給をどう使うかを会社と確認しておくことが大切です。
40日あるなら、基本はまとめて後ろに置く形です。途中に混ぜると、休んだ日の分だけ引き継ぎの期間が延び、「あと少しだけ出てほしい」と言われる余地が生まれます。
有給40日を消化するなら、退職を伝えるのは退職日の3か月前
法律(民法627条)では、期間の定めのない正社員は、退職を申し出てから2週間で辞められます。ただ40日を消化して、そのうえ引き継ぎもするなら、2週間ではまったく足りません。
目安は、退職日の3か月前、最終出社日の1か月以上前。就業規則に「退職は1か月前までに申し出ること」などの定めがあれば、それも確認しておきましょう。そして前の章のとおり、申し出るときは有給の日程もセットで出します。
早く言いすぎても、遅すぎても損をする。伝える日の決め方はこちら
退職 半年前は早すぎ?決まる前に言うと損する理由を採用担当が解説】
引き継ぎのスケジュールは最終出社日から逆算して自分で出す
引き継ぎの中身を一覧にして、誰に・いつまでに・何を渡すかを書いた簡単な表を作り、退職の申し出と一緒に上司に渡します。
会社が一番恐れているのは、あなたが抜けたあとに誰も分からない仕事が残ることです。そこに先回りして答えておけば、有給の話は通りやすくなります。
職場への挨拶は、有給に入る前の最終出社日に済ませておくのが一般的です。
退職日までに40日消化できないときは「分割」か「買い取り」
引き継ぎの量が多くて、どうしても最終出社日までに終わらない。
そういうときは、次の2つの方法を検討できます。
| 方法 | やり方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 🟢 分割して消化 | 有給を退職前にまとめて取るのではなく、引き継ぎ期間の中に週1〜2日ずつ入れていく | 引き継ぎの進み具合を見ながら、上司と日程を調整する |
| 🟡 買い取りを相談 | 使い切れない有給について、会社に買い取りができるか相談する | 会社に買い取り義務があるわけではありません。 会社の制度や事情によって対応が異なります |
「全部まとめて休む」ことにこだわらず、引き継ぎと有給消化を両立させる方法を会社と相談するのが現実的です。
有給の買い取りは、原則として認められていません。お金で済ませると、休める日が減ってしまうからです。
ただし、退職時に使いきれずに消えてしまう分は例外で、買い取っても違法にはなりません。とはいえ会社に買い取る義務はないので、断られることもありますし、金額も会社次第です。
次の会社に早く入りたい人は、買い取りを条件に退職日を前倒しするという交渉もできます。
次の会社がもう決まっている人にも、これから探す人にも、いちばん気になるのは入社日だと思います。
ここからは、採用する側の話です。
有給消化40日で転職先の入社日はどうなる?採用側の本音

面接をしていると、前の会社に有給がたっぷり残っている応募者には必ず当たります。「ちゃんと休んでから来てほしい」と思う気持ちは本当です。
同時に、入社日が1日延びるたびに「このまま辞退されたらどうしよう」と、内心ずっとそわそわしています。
採用する側のこの本音を知っておくと、入社日の伝え方がまるで変わります。
面接で聞くのは「内定の連絡から何日後に来られますか」
私は面接で「いつから来られますか」とは聞きません。
「内定の連絡から何日後に来られますか」と、日数で聞いています。「来月から」という答えだと、人によって幅がありすぎて、受け入れの準備が組めないからです。
有給を40日持っている人は、ここで「引き継ぎに◯週間、有給消化に◯日、合わせて内定から◯日後」と日数で答えられるようにしておくと、採る側は計画を立てやすくなります。
入社が3か月先の人と、すぐ来られる人。条件が同じなら
以前、条件がほぼ同じ候補者が2人並んだことがあります。片方は「引き継ぎに最低2か月、そのあと有給消化」で、来られるのが3か月以上先でした。
本当はそちらを待ちたかった。でも最終的には、すぐ来られるほうを採りました。3か月待ったあとで辞退されたら、それまでの求人広告費がまるごと無駄になります。内定承諾書に法的な拘束力はないので、待つ側は何の保証もないまま待つことになる。そのリスクを会社として取れませんでした。
ただ、ここで誤解してほしくないのは、2〜3か月後の入社自体はごく普通のことで、それだけで落とすことはないという点です。あれは条件がまったく並んだときの、最後の決め手の話でした。
転職先も「入社前に辞退されないか」を気にしている
先ほどの、引き継ぎのために入社を2か月後にした人のときもそうでした。待っていた2か月のあいだ、他の会社も受けていて辞退されるのではないか、という心配は正直ずっとありました。
入社まで期間が空くなら、入社前に出してほしいと言われた書類を早めに返すなど、連絡を途切れさせないだけで待つ側の不安はかなり減ります。

入社が遅れる理由、有給消化って正直に言うべき?
わざわざ「有給消化のため」と言わなくても大丈夫です。
「引き継ぎなどの関係で」とまとめて伝えれば十分です。
採用する側が知りたいのは理由の中身より、内定から何日後に来られるかという日数のほうです。
転職先の入社日は退職日の翌日以降に設定する
有給消化中は、まだ前の会社の社員です。その期間に次の会社へ入社すると、2つの会社に同時に在籍する形になり、社会保険の手続きなどで面倒が起きます。
入社日は、有給の最終日=退職日の翌日以降に設定するのが基本です。
在職中の転職活動そのものが会社にバレないか心配な人は、転職活動がバレたらクビ?降格は?29社辞めた採用担当が教えるバレる原因と対処法も読んでおいてください。
次が決まっていないなら、有給消化の2か月は、次を探すために使える2か月でもあります。
\有給40日は、次の会社を探すための2か月にもなる/
無料です。紹介されたエージェントで決める必要も、今すぐ動く必要もありません。
入社日が見えてきたら、次はお金の話です。有給消化中の給料は、普段どおり出るとは限りません。
有給消化40日の給料・ボーナス・交通費はどうなる?

有給は「給料が出る休み」です。ただ、いつもと同じ額が出るとは限りません。
計算のしかたは会社の就業規則で決まっているので、有給消化に入ってから給与明細を見て驚かないよう、先に確認しておきましょう。
給料:有給消化40日のあいだも、月給制なら基本は満額
有給の日の給料の計算のしかたは、法律で3つに決まっています。
| 計算方法 | どう計算する? | ポイント |
|---|---|---|
| 🟢 普段どおり払う | 出勤したものとして、通常どおりの賃金を支払う | 多くの会社で採用されている方法 |
| 🟡 直近3か月の平均で払う | 直近3か月の賃金総額を、その期間の暦日数で割って計算する | 土日・祝日などの休日も含めて計算するため、通常の賃金とは金額が変わることがある |
| 🔵 健康保険の基準額で払う | 健康保険の標準報酬月額をもとに算出した日額を支払う | 労使協定がある場合に限って選択できる |
つまり、有給を取った日に「いつもの1日分」がそのまま出るとは限りません。自分の会社がどれなのかは、就業規則か給与規程で確かめておきましょう。
多くの会社と同じ「普段どおり払う」方式なら、月給制の人は有給消化中の月も基本的に満額です。ただし、有給の日に残業代は付きません。
たとえば、基本給と手当で月25万円、ふだん残業代が月3万円ついていた人の場合。有給消化中の2か月は25万円ずつで、残業代の3万円×2か月=6万円が、いつもより少なくなります。
残業代込みで生活を組んでいた人は、手取りが下がる前提で、2か月分の家計を見直しておいてください。
ボーナス:有給消化中に支給日があればもらえる。ただし減額はあり得る
有給消化中でも、退職日までは会社に在籍している社員です。
就業規則に「支給日に在籍していること」という条件があれば、支給日が退職日より前なら対象になります。
ただ、ボーナス(賞与)には「これからの働きへの期待」の分が含まれているとされ、退職予定者は査定で減額されることがあります。
どこまで減らせるかは会社によって違うので、退職日をボーナスの支給日のあとに置けるなら、そのほうが安全です。
交通費:有給消化中の通勤手当は就業規則次第
通勤手当は法律で義務づけられたものではなく、会社の就業規則で決まります。
出勤しない期間の分は払われなかったり、先払いの定期代を返すよう求められたりすることがあります。
有給に入る月は、定期券を新しく買わずICカードで乗る。これだけで、払い戻しの手間と損が防げます。
最後に、お金以外で退職日の前後に引っかかりやすい手続きを見ておきます。
退職時の有給消化中の注意点|社会保険・資格確認書・副業
有給消化中は出社しないぶん、手続きの抜けに気づきにくくなります。退職日を決める前に、ここだけは目を通してください。
退職日が月末か月末の前日かで、社会保険料が変わる
会社の健康保険・厚生年金の資格がなくなるのは、退職日の翌日です。
有給消化中の人は、有給の最終日が退職日になります。
社会保険料は、資格を喪失した日の属する月の前月分までが原則としてかかります。
退職日によって、6月分の社会保険料がかかるかどうかが変わります。
| 退職日 | 資格喪失日 | 6月分の社会保険料 | 給料からの控除 |
|---|---|---|---|
| 🟢 6月30日退職 | 7月1日 | かかる | 6月分が控除される |
| 🟡 6月29日退職 | 6月30日 | かからない | 6月分は控除されな |
6月30日退職なら、6月分の社会保険料が発生します。
健康保険・厚生年金の保険料は、原則として会社と本人で折半します。
一方、6月29日退職なら、資格喪失日は6月30日になるため、6月分の会社の社会保険料は発生しません。
つまり、「月末に辞めるか、その1日前に辞めるか」で、社会保険料の扱いが変わるということです。
これだけ見ると月末の前日に辞めたほうが得に見えますが、その場合は6月分から国民健康保険と国民年金に入ることになり、こちらは全額自分で払います。
「月末退職は損」とは限らないので、退職日は次の会社の入社日とセットで決めてください。

退職日の「翌日」に次の会社に入るなら、このあたりはほぼ気にしなくて大丈夫です。
国民健康保険・国民年金への切り替えの期限と手順は、退職後の年金・保険の切り替え手続きはいつまで?放置するとどうなる?必要書類と全手順を解説にまとめています。
資格確認書は退職日のあとに返却する。有給に入る前に返さない
紙の健康保険証は2025年12月2日以降使えなくなり、今はマイナ保険証か、マイナ保険証を持っていない人に届く「資格確認書」で受診する形になっています。
資格確認書を持っている人は、退職日のあとに会社へ返却します。退職日の翌日以降に使ってしまうと、医療費の7〜9割をあとで返すことになります。
逆に、最終出社日に返してしまうと、有給消化中の2か月は手元に何もない状態になります。最終出社日に「退職日のあとに郵送で返します」と伝えておくのがいちばん安全です。
マイナ保険証そのものを返す必要はありません。
有給消化中にバイトや転職先で働いていい?
2か月も休みがあると、少し稼いでおきたくなる人もいると思います。ただ有給消化中はまだ前の会社の社員なので、就業規則の副業の決まりがそのまま効いています。
暇な2か月で稼ぎたくなったら、始める前にここだけ確認を
有給消化中のバイトはバレる?いくらまでOK?29社辞めた採用担当が解説
ここまでで、有給40日を使い切るための段取りは一通りそろいました。最後に、細かい疑問をまとめて答えておきます。
退職時の有給消化40日でよくある質問
本文で書ききれなかった細かい疑問に、短く答えます。
Q. 退職時に有給40日を全部消化するのは非常識?
非常識ではありません。揉めるのは日数ではなく、出し方のほうです。
退職の申し出と同じ日に、引き継ぎの計画と有給の日程をセットで出してください。
Q. 有給消化に入る前、職場への挨拶はしないとダメ?
義務ではありません。挨拶をするかどうかより、仕事が止まらないことのほうが会社にとっては大事です。
挨拶をしないなら、引き継ぎ資料だけは最終出社日に必ず置いていってください。
円満退職にどこまでこだわるかは円満退社はありえない!真の円満退社は存在しない…【悩むだけ損】にまとめています。
Q. 有給休暇が残ったまま退職したら、あとから請求できる?
できません。退職日を過ぎた有給は消滅します。
退職日が決まった時点で残日数を確かめ、全部を日付で申請しておいてください。
Q. 有給消化40日のあいだにある公休(土日)はどうなる?
公休はそのまま休みで、有給の日数は減りません。もともと休みの日に有給は使えないので、40日の有給とは別に土日祝が挟まります。
月給制なら、公休の分も月給に含まれています。最終出社日を決めるときは、公休を含めたカレンダーで数えてください。
Q. パートや契約社員でも、退職時の有給消化はできる?
できます。フルタイムの契約社員なら、正社員と同じ日数が付与されます。
週4日以下かつ週30時間未満のパートは、勤務日数に応じて少なめに付与されます。
雇用契約書と給与明細で、自分の残日数を先に確認してください。
Q. 有給消化を言い出せないまま、退職日が近づいている
退職日までの日数が少ないほど、交渉に使える時間もなくなります。自分で切り出せないなら、有給の交渉まで任せられる弁護士の退職代行という手があります。
最終出社日を待たずに、今週中に相談先へ連絡してください。
\言い出せないまま、有給ごと退職日を迎えるくらいなら/
会社と直接話さなくていい方法があります。まずは相談だけでも大丈夫です。
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最後に、有給40日を取りこぼさないためのポイントだけ確認しておきましょう。
まとめ|退職時の有給消化40日は、退職を伝える日にセットで申請する

冒頭で紹介した「1日も有給を使わせてもらえなかった」人は、何も悪いことをしていません。
引き継ぎをきちんと終わらせたいと思って、早めに退職を伝えた。
むしろ、誰よりも誠実に動いた人です。
それでも、有給は消えてしまいました。
足りなかったのは、退職を伝えたその日に、有給をいつ取得するのかまで一緒に伝えておくこと。
本当に、それだけだったんです。
あなたには、同じ思いをしてほしくありません。
| ポイント | 覚えておきたいこと |
|---|---|
| 🟢 有給は最大40日 | 一般的な労働者は勤続6年6か月以上で年20日が付与されます。前年度からの繰り越しを合わせると、最大40日になります。なお、年10日以上付与される人には年5日の取得義務があります。 |
| 🟢 退職前に有給を申請する | 人手不足や引き継ぎがあっても、有給は原則として労働者が希望する時季に取得できます。会社が変更できるのは「事業の正常な運営を妨げる」場合です。 |
| 🔴 拒否されたら記録を残す | まずメールなどで申請内容を残す。そのうえで人事・総務などに相談し、解決しなければ労基署への相談を検討する。法的な争いになれば弁護士への相談も選択肢です。 |
| 🟡 40日あれば約2か月休める | 週休2日制なら、40日=40労働日なので、カレンダー上ではおおむね2か月分の期間になります。退職日から逆算して、早めに有給消化の日程を考えておきましょう。 |
| 🟢 転職先が知りたいのは「いつから来られるか」 | 転職先との調整では、退職理由を細かく説明することより、「内定から何日後に入社できるか」を明確に伝えられることが大切です |
有給は、「退職するときに会社からもらうご褒美」ではありません。
これまで働いてきたことで、法律上認められている休暇です。
だからこそ、退職を伝えるときは、
「退職します」だけで終わらせない。
「○月○日を最終出社日として、残っている有給を○月○日から消化したいです」
ここまでセットで伝えてください。
早めに動くことは、会社への配慮です。
でも、配慮した結果、自分の有給まで失う必要はありません。
そして、今日やることは3つだけです。
- 給与明細で、有給の残日数を確かめる
- 退職日から逆算して、最終出社日を決める
- 退職を伝えるその日に、有給の日程をメールで出す
40日分の有給は、あなたがこの会社で働いてきた年月そのものです。遠慮して置いていくものではありません。
しっかり受け取ってから、胸を張って次の会社に行ってください。

辞めると言うその日に、有給の日付まで出す。それがいちばんの自衛です。



